野球部の監督
僕はとても焦っていた。
これから聞かれることに対して全て本当のことを言って良いのか?
もしも他の人が言っていない事まで僕が言ってしまったら他の人にも迷惑が掛かると・・・。
一人部屋に来て4時間が経っていた。
先生からは「本当のことを全部教えてくれ、もし教えてくれたら篠田だけは特別に早く帰らせてあげられる」と言われていた。
しかし僕は何も言わなかった。自分を守ることよりも先輩や友達の方が何十倍も大切だったから。
何も言わない僕を見て先生は「他の生徒の言い分を聞いてくる」と言って部屋を去っていった。
1時間後・・・。
先生が戻ってくると「篠田全部嘘じゃないか!」と大きな声で僕を叱った。
「酒もたばこもしてるやないか!」と先生は言った。
僕はその瞬間「全てバレてしまった」と心の中で思った。
そういえばタバコだけじゃなくて、酒も飲んでしまったな・・。もうどうにでもなれと思った。
誰が酒とたばこをしたことを喋ってしまったかは大人になった今でもわからない。でも、その”誰か”を恨む気はない。
結局やってしまったのは自分なんだから。
野球部の練習する「カキーン」という音ももう完全に聞こえなくなった。
カーテンは閉まっていたが外が暗くなったのは部屋のどんよりした雰囲気でなんとなくわかった。
そこからは先生同士の話し合いになっていたそうで、夕方6時になっていた。
先生が部屋に戻ってくると「おまたせ。今日はもう暗くなったから帰ろう」と言い、僕を帰らせた。
次の日の学校への呼び出しは無かった。
日曜日だったが野球の練習はあったから、僕はいつものように1日練習をするために家を出た。
学校へ着くと野球部の友達が待っていた。もちろん昨日一緒に監禁されていた先輩もいた。
「篠田、昨日大丈夫だったの?」「なにがあったの?」と全員が聞いてきた。
僕はもうそのことについて考えたくなかった。
練習が始まる時間になり、ランニングが始まった。
ランニングが終わると野球部の顧問の先生がやってきた。
僕たちが整列してランニングしているのを見て、顧問の先生は走ってきて「おい!片田と篠田はなにしとんや!お前ら練習できると思うなよ!」と50メートル先の職員玄関入口からグラウンドのほうへ大きな声で言った。
僕は月曜日になるまで顧問の先生には今回の件はバレないと思っていたから、びっくりした。
しかし僕の担任の先生と言うのが、実は野球部のコーチ(普段練習にはこないが)だったから昨日話し合いが終わってから、監督(野球部の顧問)に電話でもしたのだろう。
その野球部の監督はとてもそういったことに厳しい。しかも問題を起こしたのに黙って練習をしていたからなおさらだ。
僕は片田先輩と練習を抜け、監督に謝るために職員室へ行った。
「先生すいませんでした。反省しています」と片田先輩と僕が言うと
「お前ら何したかわかってるの?」と僕たちに言った。続けて「あいつらにも責任はある。問題を起こしたやつがいるのに黙って練習に参加させているとは何事や」と言った。
”あいつら”とは同じ野球部の生徒たちのことである
僕と片田先輩は職員室を出て、練習中の野球部のところへ走っていった。
走っている途中に僕は片田先輩に「相当やばいことになってしまいましたね・・」と言うと
「俺が守ってやるから大丈夫だ」と言ってくれた。
野球部のところへ戻り、片田先輩が「みんなごめん!一緒に職員室に来てくれんか?」と言った。
全員で職員室へ行き、片田先輩と僕が先頭に立ち、先生に謝ることになった。
野球部のキャプテンが「先生すいませんでした。僕たち何があったか知らなくて、片田と篠田を練習に参加させてしまいました」と言った。
すると監督は「それもそうか。お前らは何も知らなかったんだな。すまんな」と言い、野球部を練習に戻らせた。
知らなかったとキャプテンは嘘をついているわけではない。それもそのはずだ、あの日泊まりをしたこと自体、問題を起こした4人しか知らなかったのだから。
僕たちは再び職員室へ3人になった。
すると監督が「お前らコーチから大体の話は聞いとる。何があったか自分らの口からも言わんか」と言った。
僕たちは全て本当のことを話した。昨日ウソをついている部分についても全て本当のことをだ。
話をしている最中も監督の顔はとても恐い。
話を全てし終わると、監督は立ち上がり、隣の部屋行くように言った。