第六話
けんたは救急車呼ぶことになるような非常事態に遭遇したことがない。
ましてや自分が起こした事件だ。冷静でいられるわけもなく、体がブルブルと震えて顔は真っ青になっていた。
血も通っていないような顔色でただ呆然としていた。
としきは救急隊員が来るまでただただ泣き叫んでいた。
このりは冷静な対応で必死に慰めていた。
「ピーポーピーポーピーポー」
10分程度で救急車が到着した。
「お母さん息子さんの状態は大丈夫でしょうか。詳しく教えてください。」
「ずっと見ていたわけではなく、泣いているのに気づいてからなので、詳しく状況は正直わかっていないのですが、子供たちも何が起こったかわかっておらず、とにかく病院で調べて欲しいです。いまわかっていることは腕が痛いということです。
「わかりました。としきくーん大丈夫かな腕触ってもいい?」
「だめ!触るとすごく痛い」
「脱臼してるかもしれないですね。このまま応急処置をすれば簡単に治るのですが、まだ小さいお子様なので繊細に腕を動かさず、病院で治療いたします。
「よろしくお願いします。」
そのままとしきは運ばれていった。
けんたはとしきが運ばれるまで終始無言で全身が震えていた。
「けんた!大丈夫?心配しないでいいからね、詳しいことはとしきから聞くから今日は帰りな?」
かなりの優しい言葉にけんたやっと我に帰った。
「本当にすみません。また遊びにきます。」
けんたはいまだ緊張を保ちつつ家に帰った。
としきは病院で脱臼と診断され、腕を元に戻し、すぐ家に帰宅した。
「としき何があったの?ちゃんと言いなさい。」
このりに事情を聞かれるが、なかなか言い出せない。
けんたのためを思ってたか、けんたを悪者したくないのかとしきの心情は少し複雑だった。